
便秘症
便秘症
便秘とは、お腹の中に便がたまり、なかなか出にくい状態のことです。
次のような場合には便秘を疑います。
特に、腸に便がたまり過ぎると、少量の便が漏れ出ることがあります。
このため、「1日に何度も少しずつ便が出る」「下着が汚れる」という場合でも、実は便秘であることがあります。
こうした便秘により、医療的な治療が必要な状態を「便秘症」と呼びます。
さらに、便秘症が 1~2か月以上続く場合は、「慢性便秘症」といいます。
小児の便秘は、ライフイベントの変化と深く関係しています。
年齢 | 便秘が起きやすい原因 |
---|---|
新生児〜乳児期(0〜1歳) | 母乳からミルクへの切り替え、離乳食開始 食事内容や水分量の変化で一時的な便秘が起こりやすい時期です。 |
幼児期(1〜3歳) | トイレトレーニング、排便の我慢、偏食 |
学童期(4〜7歳) | 入園・入学などの環境変化、学校での排便我慢、運動不足 |
小児の便秘症は、放置するとだんだん悪化することが多い病気です。
その背景には、「痛み」→「我慢」→「さらに便が硬くなる」という悪循環があります。
2〜3歳のお子さんは、硬い便を出したときに肛門が切れて強い痛みを経験すると、「もうウンチはしたくない」という気持ちになります。
すると、次の排便を我慢するようになります。
便をしばらく我慢していると、便意は次第になくなります。
しかし、大腸の中では便がどんどんたまり、大腸が便から水分を吸収するため、ますます便は硬く大きくなります。
すると、次に排便するときにさらに強い痛みを伴うことになり、子どもはますます便を我慢するようになります。
便秘が続くと、常に便が直腸にたまった状態になり、便意を感じにくくなることがあります。
本来であれば、直腸に便がたまると「ウンチしたい」という信号が脳に送られますが、便が常にある状態が続くと腸のセンサーが鈍くなるのです。
このため、さらに長く便をため込み、便がより硬くなるという悪循環が進行します。
便秘を改善するためには、「痛くない排便の経験」を積み重ねることが大切です。
こうして腸の感覚を正常に戻し、排便リズムを再構築することで、慢性的な便秘症は改善していきます。
小児の慢性便秘症は、「たまった便をしっかり出す」→「便をためない生活習慣をつくる」→「再発を予防する」という3段階で治療を行います。
まず、腸の出口の方に便がたまっているかを確認します。
次のような症状がある場合は、便がたまっている可能性が高いと考えられます。
これらの症状がある場合は、まず腸にたまった便をしっかり出す治療が必要です。
便が腸にたまったままでは、いくら薬を使っても十分な効果が得られません。
そこで、以下の方法でまずは腸を空にしてリセットすることが大切です。
腸を完全に空にするまで、3~5日程度かかることもあります。
これらの処置はお子さんにとってつらい治療ではありますが、たまった便を放置すると便秘はさらに悪化するため、必要に応じて行います。
腸を空にした後は、再び便がたまらないようにするために、次の3つを柱として治療を続けます。
すぐに効果が出るものではありませんが、便秘の改善だけでなく、お子さんの健康全般にとっても大切です。
食事療法の効果はお子さんによって差がありますが、腸の健康や便通改善に役立ちますので、ぜひ実践してみましょう。
生活習慣や食事を工夫しても便秘が続く場合は、薬を使って「痛みのない排便」を積み重ねることが重要です。
薬の種類 | 主な薬剤(製品名) | 作用のしくみ |
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浸透圧性下剤 | 糖類下剤 ・マルトース(マルツエキス) ・ラクツロース(モニラックなど) |
腸の中に水分を引き込んで便を柔らかくし、自然に出やすくします |
塩類下剤 ・酸化マグネシウム(カマ、マグミットなど) ・水酸化マグネシウム(ミルマグ) |
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ポリエチレングリコール製剤 ・マクロゴール4000(モビコール) 2歳以上 |
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刺激性下剤 | ・ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン) ・センノシド(プルセニドなど) |
腸を刺激して、 腸の動きを活発にします |
坐薬 | ・ビサコジル(テレミンソフト) ・炭酸水素ナトリウム+無水リン酸二水素ナトリウム(新レシカルボン) |
直腸を刺激して便を出します |
便秘の治療では、「痛くない排便体験を積み重ねること」が最も大切です。
生活習慣・食事・薬をバランスよく組み合わせることで、腸の感覚をリセットし、自然な排便リズムを取り戻すことができます。
便秘は焦らず、根気よく取り組むことが成功への近道です。
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